なかむらレディースクリニックの未受精卵子凍結
2024年10月08日こんにちは、培養室です。 大変暑かった夏が終わり、急に朝晩が冷えるようになりました。気温の変化が激しく体調管理が非常に難しいですね。 このコラムでは、未受精卵子凍結について書かせていただくことが多いです。
自然周期採卵(低刺激周期採卵)を主体とした、身体に優しい採卵を目指します。
クロミフェンの内服を基本とした、卵巣刺激法です。卵胞の数と大きさを確認しながら、必要に応じて少量の注射薬(hMGもしくはFSH)数回注射します。卵胞チェックと血液検査で、状態を確認して採卵日を決めます。最終的に卵を成熟させるための刺激は基本的に点鼻薬を用いて行います。卵を成熟させるための刺激は下垂体から分泌されるホルモンによって行われますので、より自然に近い状態で採卵に臨むことができます。具体的な来院スケジュールは当クリニックの卵巣刺激方法をご覧ください。
低刺激で行うので、自然に選択された卵胞が大きくなってきます。そのため良好な卵が取れる確率が高くなります。
全く刺激しない場合(完全自然周期)に比べると、複数個の卵が取れる可能性が高くなります。
hCG製剤を使用しないため、卵巣に不自然な刺激を与えません。重症の卵巣過剰刺激症候群になる心配はほとんどありません。
排卵を抑える薬を使用しないため、排卵刺激が事前に出てしまうことがあります。(採卵前に、自然に排卵してしまうことがあります。)
当クリニックでは土日も採卵を行っていますので、もしも予定よりも早くに採卵のサインが出てしまったとしても、緊急採卵を行うことで対応が可能です。これにより採卵のキャンセル率は1%以下に抑えられています。
院内でのホルモン検査により、的確な採卵時期の決定が行えます。
治療に必要なホルモン検査は院内で行います。採血後30〜40分で結果が出ますので、迅速にかつ適切な採卵時期の判断が行えます。(タイミング法や人工授精においても、超音波検査に加えて、ホルモン検査を行うことで、より正確に排卵日の推定を行っています。)
以前の針(17G)に比べて細い、20Gもしくは21Gの採卵針により、傷みと出血を軽減しました。
細い針の採用により、多くの採卵が麻酔なしで行われており、また、採卵後の出血もほとんどありません。
(麻酔下での採卵も行っております。ご希望の場合は医師や看護師にご相談ください。)
卵胞発育に合わせて、土日も採卵可能です。
土日の採卵も可能なため、採卵時期の推定や調整が困難な自然周期も、余裕を持って行うことができます。また、自然に排卵の刺激が出てしまった場合でも、緊急採卵を行うことで採卵のキャンセル率を1%以下に抑えています。
体外受精は、まず良質な卵子を得ることから始まります。卵胞(卵子が入っている袋)を育てるために、卵巣の刺激を行います。
この卵巣刺激には様々な方法があり、患者様の卵巣予備能や治療歴を元にアプローチを考えていきます。
採卵周期に関するご要望、日程のご都合などありましたら、医師にお伝えください。
採卵当日には、精液が必要です。(未受精卵子凍結の場合を除く)
採精は、院内で行うか、もしくは採卵当日の朝、ご自宅で採精してお持ち込みいただくことが可能です。当日、精液の準備が難しい可能性がある場合は、精子凍結保存を行うことも可能ですので、早めにお申し出ください。
以下、実際のスケジュールの一例と共に、各周期の特徴をご説明します。
卵胞を育てるための卵巣刺激には、様々な方法があります。
たくさんの薬・注射を用いて、一度の採卵でたくさんの卵子を得る方が効率が良い、というのも一つの考え方です。しかし、その分身体には負荷が掛かりますし、その刺激方法が卵子に見合わない場合があります。
また、薬との相性が悪く非常に体調が悪くなってしまう場合や、卵巣の予備能が低下している症例では高度の刺激を行っても卵胞の発育がよくない場合があります。
そこで当クリニックでは、全く刺激を行わない完全刺激周期の他に、経口薬や低用量の注射を用いる、低刺激の自然周期を行っています。
当クリニックの自然周期(低刺激法)の目的は、なるべく自然に近い状態で育った良質な卵子を、複数個獲得することです。超音波検査と血液検査を用いてこまめに観察し、必要最小限の補助で卵胞の発育を促すため、身体にかかる負担も最小限で採卵に臨むことができます。
経口薬は主にクロミフェンやレトロゾールという薬を用いています。これらの薬はFSH(卵巣刺激ホルモン)の量を増やし、卵胞発育を亢進させる目的で使用しますが、作用機序(薬が効果を及ぼすまでの仕組み)が違い、それぞれの適応は異なります。経口薬に加えて、どの注射薬をどのタイミングで使うか、患者様それぞれの状況にあわせたオーダーメイドの採卵周期を構築します。
自然な排卵の場合、下垂体から出るFSHというホルモンの働きで卵胞が育ちます。育ってきた卵胞はエストロゲンを分泌します。そのエストロゲンの量を視床下部が感知して、FSHの量をコントロールしています。これらの働きにより、通常は、1回の月経周期に1つの卵胞が育ちます。
クロミフェンはエストロゲンに似た構造をしています。クロミフェンを投与すると、視床下部にあるエストロゲン受容体に、エストロゲンを押しのけてクロミフェンが結合します。クロミフェンによるエストロゲン作用はほとんどないため、視床下部は「エストロゲンがあまり分泌されていない」と判断し、いつもより多くのFSHを分泌します。その結果、卵胞が複数個育つことになります。
クロミフェンは月経3日目から使用します。月経8日目頃に卵胞のチェックを行い、状況に応じて、少量のFSHもしくはhMGを追加します。最終的な排卵の刺激はGnRHアゴニストの点鼻薬やhCGの注射薬を用いて行います。薬剤の使用を最小限に抑え、必要な卵を確保しようという方法です。
レトロゾールは男性ホルモンを女性ホルモンに転換する酵素を阻害する薬剤です。この薬を内服すると、卵巣でのエストロゲン合成が阻害され、一時的にエストロゲンの濃度が低下し、アンドロゲン(男性ホルモン)の濃度が増加します。エストロゲンが低下すると、脳視床下部下垂体へのネガティヴフィードバック作用によりFSHの分泌が増加し、卵胞発育効果が現れます。また、アンドロゲンの増加により、FSHに対する卵胞の感受性が高まります。これにより、少ない量のFSHにも反応するようになります。
この薬の特徴は少ないFSHにも卵胞を反応させることで、特に多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)に効果的であると考えられています。また、AMHが低い方、40歳以上の方にも効果的であるという報告もあります。レトロゾール自体に排卵誘発作用はありませんので、ここで発育してくる卵は自然に選択された卵と思われます。
ただ、レトロゾールはもともとホルモン感受性のある乳癌の治療薬として開発されたので、排卵誘発における保険適応はありません。このことから、気になる薬の安全性ですが、児の先天異常の発生率は自然妊娠と変わらないと考えられています。また、副作用も軽度の気分不良などはあるようですが、重大な副作用は認められません。
脳視床下部下垂体から分泌されるホルモンで卵子は成長していきます。何も薬剤を使用しなければ、通常どちらかの卵巣に1つの卵胞が育ってきます。完全自然周期はこの卵胞の卵を使用する体外受精です。ですから、最も身体に負担をかけない採卵方法です。ただ、完全な自然周期で採卵する場合、通常採卵できる卵は1つです。
当クリニックではクロミフェンなどを用いた、自然周期での採卵を基本としています。完全自然周期はAMHが低く、薬を用いても複数個の卵胞発育が期待できない場合などに行っています。年齢とともに卵巣の機能は低下していきます。また、若くてもAMHが低く、卵が発育しにくい場合もあります。
完全自然周期は薬を使用しない、身体に負担の少ない方法です。
ですがその反面、排卵の刺激以外の薬を使用しないことで、自然に排卵の刺激が出てしまう可能性が他の方法よりも若干高く、キャンセル率が少し高くなります。当クリニックでは自然の刺激が出た場合は、翌日に緊急の採卵を計画することで、採卵のキャンセルをなるべく避けています。
当クリニックでは、自然周期での採卵を多く行っていますが、卵巣予備能やこれまでの治療歴、患者様のご希望に応じて、刺激周期も行っています。刺激周期は、基本的に一度にある程度まとまった数の卵を期待して行います。
また、ある程度採卵日をコントロールすることができます。
ですので、仕事の都合上採卵日をある程度特定したい方、仕事期間中はどうしても採卵できないが休暇をとってその期間に受精卵をためておきたい方、2人目の妊娠も目指していてできれば複数個の受精卵を凍結しておきたい方などに良い方法です。しかしながら、AMH値が低い方、FSH値が高い方は刺激周期を行っても、取れる卵子数は自然周期と変わらないことが多く、その場合はこの方法の適応にはなりません。
体外受精の副作用としてよく挙げられるものの中に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があります。これは、非常にたくさんの卵胞が発育した周期に採卵・妊娠することで起こる症状なのですが、中でもそのリスクが高い方にはアンタゴニスト法をお勧めしています。この他に、悪性腫瘍の治療前に行う卵子保存など、採卵周期に時間を掛けられない方には、ランダムスタート法での採卵を行うことで限られた時間を有効に活用できます。
このように、一口に刺激周期と呼ぶものの中にも様々なプロトコールがあり、一人一人の状態に見合った方法をご提案しています。
内服薬(プロゲスチン)とゴナドトロピン注射(rFSH、hMG)を併用して卵巣を刺激する方法で、多数の卵胞を育てることができます。
新しい排卵誘発法ですが、現在、アンタゴニスト法やショート法とならんで、よく行われる方法です。特に重度の多嚢胞卵巣(PCO)で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い人には第一選択となります。プロゲスチン(合成プロゲステロン)はLHを抑え排卵を防ぎます。当院では主にデュファストンを使用します。
GnRHアゴニストという点鼻薬で自分の身体から分泌されるLHとFSHを抑制し、卵巣を刺激するホルモン剤を注射で投与することで、卵胞を発育させていきます。原則としてGnRHアゴニストを1日3回欠かさず使用することや、連日の注射が必要になります。反面、自然周期のように意図しない排卵の刺激は基本的に出ませんので、自然周期よりもたくさんの卵胞の発育を待つこともできますし、自分に都合の良い日付を選ぶことができるのです。
GnRHアゴニストには、使用を開始して2~3日間はLHとFSHを分泌させる働きがありますが、その後はLHとFSHの分泌を抑制する作用があります。ロング法は、卵をとる前の周期からこの薬を使用する方法で、採卵周期にはLHとFSHの分泌を抑える作用のみが働きます。ショート法は、月経2日目からこの薬を使用する方法で、この薬の特徴である、GnRHアゴニスト使用開始直後の卵を発育させる効果も利用する方法です。ロング法は卵胞が比較的そろって育ってくる傾向があるという特徴があり、ショート法は注射薬の量が少なくてすむという特徴があります。
ロング法は歴史のある治療法ですが、ロング法でもショート法でも妊娠率は変わりませんので、当クリニックでは、薬剤が少なくて済み、数多くの採卵を見込むことができるショート法を主に行っています。
注射薬で卵巣を刺激すると、いくつかの卵が発育し、複数の卵胞から卵胞ホルモンが分泌されます。体内の卵胞ホルモン値が高くなりますので、一つ一つの卵はまだ発育途中であったとしても、排卵刺激が出てしまうかもしれません。ですから、それらの発育途中の卵胞が排卵してしまわないように、排卵刺激を抑制する必要があります。この方法では、GnRHアンタゴニストという注射薬を用いて、排卵刺激を抑制します。
この方法では、月経3日目から毎日、hMGもしくはFSHを注射し、卵胞を発育させます。7~8日目頃から超音波検査と、状況に応じて血液検査を行います。卵胞の直径が14mm程度に発育するか、もしくは卵胞ホルモン値の上昇が確認されたら、それ以降、適切な卵胞のサイズに発育するまで、基本的に毎日アンタゴニストの注射が必要になります。排卵の刺激は点鼻薬やhCG注射で行います。
アンタゴニスト法では、排卵の刺激をGnRHアゴニストの点鼻薬で行うことができるので、hCG注射を用いるのと比べて卵巣過剰刺激症候群のリスクを下げることができます。ですので、卵巣過剰刺激症候群になりやすい多嚢胞性卵巣症候群の方などに効果的です。またショート法に比べ、注射の量は少なくて済む傾向があります。ただし、稀に、採卵前に排卵刺激が出てしまうことがあります。
通常の採卵周期では、生理周期初期から経口薬や注射を使って卵胞の発育を補助し、排卵直前の状態で採卵を行うのが一般的です。これは、その周期に見合った卵巣刺激方法の確認や、卵胞の発育に自分自身から分泌されるホルモンを利用することが容易であるためです。一方で、発育する可能性を備えた卵胞は、生理周期のどのタイミングにも存在していることが分かっています。ランダムスタート法では生理周期を考慮せずにhMGを使用することでこれらの卵胞を発育させ、採卵に臨みます。ただし、通常の時期とは外れているため、使用する注射薬の量は増加します。また、刺激の開始時期によっては、刺激中に月経になることがありますが、採卵には影響しません。
予想外の排卵を防ぐために、アンタゴニスト法で行っています。
胚移植とは、胚を子宮の中に戻してあげることです。長いカテーテルを用いて、ごく少量の培養液と一緒に、胚を子宮内へもどします。このとき子宮内膜の適切な場所へ胚移植することが大切なのですが、当クリニックでは経腟超音波で子宮内腔に入っていく移植用カテーテルを確認して胚移植を行っています。リアルタイムで確認するため、適切な位置への胚移植が可能です。
胚移植では、十分に育った子宮内膜の適切な場所へ、適切な時期に移植することが大切です。そのため、採卵の周期に子宮内膜の育ちが十分でない場合は凍結保存をお勧めしています。この他、たくさんの卵胞が育っていた周期でも、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を防ぐために凍結保存を指示する場合もあります。これらの状態を除けば、採卵周期に胚移植を行うことが可能です。この方法では、女性ホルモンの分泌は卵巣から行われますので、胚移植後に使用するホルモン剤の量は少ない傾向にあります。
凍結融解胚を移植する場合、卵胞ホルモンを投与することで排卵を起こさずに内膜を成長させて胚移植する方法
(ホルモン補充周期)と、自分自身のホルモンで内膜を成長させて自然の排卵に合わせて移植する方法(自然周期)の2種類があります。
現在、最も多く行われている胚移植法です。月経が不規則で排卵日を推定しにくい方、自然では子宮内膜が育ちにくい方、移植日をあらかじめ計画したい方にとっても、有効な方法です。凍結した胚を移植する時に、ホルモン剤を使用して子宮内膜を育てて胚移植します。この方法では、子宮内膜を、ホルモン剤を用いて調整しますので、最良の状態で胚移植することができます。子宮内膜を計画的に育てるので、移植時期をあらかじめ計画することができ、排卵時期の推定のために頻繁に通院する必要がありません。通院回数が少なく、日付の設定に融通が利く反面、移植後から9週頃までホルモン剤を使用して妊娠の維持を補助する必要があります。
比較的生理周期が一定していて、子宮内膜が自然に十分発育する方に対して行います。凍結した胚は、凍結時期に応じた時期の子宮内膜でないと着床しません。薬で調整できるホルモン補充周期と違い、自然周期の胚移植の場合は排卵日の特定が必要です。そのため数回通院していただき、卵胞計測と血液検査で排卵時期を推定します。また、GnRHアゴニストの点鼻薬を用いて排卵日を決めることもあります。凍結した卵が3日目の卵であれば3日目の子宮内膜に、胚盤胞であれば5日目の子宮内膜に胚移植を行い、卵の成長と子宮内膜の成長とを同期させ移植します。自然周期の胚移植の場合、排卵後には卵胞ホルモンと黄体ホルモンがご自身の卵巣から分泌されるので、移植後のホルモン補充は少なく済む利点があります。