発育の遅い胚は女の子になる?
院長の中村嘉宏です。
12月10日より院内エレベーターの入替工事が始まっています。
しばらくの間ご迷惑をおかけしますが、2階に上がる場合にはビルのエレベーターや階段をご利用ください。
およそ1ヶ月前、学会発表で金沢まで行ってきました。
今回はポスター発表での参加でした。面白い内容となったと思うので、紹介させてください。
凍結段階が出生児性別、在胎週数、出生児体重に与える影響
2021年の日本全体の体外受精のデータでは、11人に1人の赤ちゃんが体外受精により誕生しています。→関連コラム(培養士のコラムです)
体外受精により誕生した赤ちゃんのうち、95%以上が一旦受精卵を凍結し、子宮内膜のコンディションを整えてから融解する方法で生まれています。また、卵子、あるいは胚は、さまざまな成長段階で凍結することが可能です。そこで、凍結した段階ごとに生まれた子どもの性別について調べました。
凍結時点での胚の発育段階は次の6通りです。
①未受精卵(受精していない卵子)
②前核期胚(受精後1日目)
③分割期胚(受精後3日目)
④4日目胚盤胞(受精後4日目に胚盤胞になった)
⑤5日目胚盤胞(受精後5日目に胚盤胞になった)
⑥6日目胚盤胞(受精後6日目に胚盤胞になった)
①未受精卵は採卵後に成熟卵を凍結し、融解後に顕微授精をして3日目胚まで培養して移植しました。
②前核期胚は受精後1日目に凍結し、融解後に3日目胚まで培養して移植しました。
③〜⑥は受精が確認できた胚をそれぞれの凍結日まで培養し、移植日に融解して胚移植しました。
それぞれの凍結段階で出産した児の性別について検討してみました。
女の子の割合が多かったのは、②前核期胚と⑥6日目胚盤胞で凍結した場合でした。
逆に男の子の数が多かったのは、①未授精卵子③分割期胚で凍結した場合でした。
厳密な意味では、⑥6日目胚盤胞の女児の割合、③分割期胚(3日目胚)の男児の割合については、統計学的な有意差を認めました。
現時点では、このことが何を意味するのかは、全くわかっていません。
分割期胚を移植する場合は、その時点で一番発育のいい、つまり発育速度の早い胚を選んでいます。
また、6日目胚盤胞は胚盤胞の中では成長速度が遅い胚です。
ひょっとすると男児になる胚は成長速度が速く、女児になる胚は成長速度が遅いのかもしれません。これはあくまでも推論の域をでません。
このことについては、いずれまたお話ししたいと思っています。