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クリニックコラム

2018.09.04
これからの生殖医療⑥ 反復着床不全対策の新しい切り札ERA(子宮内膜受容能検査) part2

こんにちは、院長の中村嘉宏です。

非常に強い勢力の台風が近づいて来ています。7:00頃の江坂は青空も見えて穏やかなぐらいでしたが、秋の台風は移動速度がとても早いそうなので油断はできません。

 

不要不急の外出は控えて、空いた時間にこのコラムでも読んでいってください笑。

前回(これからの生殖医療⑤ 反復着床不全対策の新しい切り札ERA(子宮内膜受容能検査) part1)は反復着床不全の場合にインプランテーションウィンドウがずれている可能性があることについてお話しました。

*前回のポイント*
排卵日(:プロゲステロンが分泌され始める日)day 0とした時、従来の胚盤胞移植ではday 5に移植を行えるように調整してきました。また、インプランテーションウィンドウ(胚が着床できる期間、子宮内膜が胚を受容できる期間:「受容期」と言います)の個人差は考慮されていませんでした。

ところが、ERA検査によって、着床不全の方のうち3割近くの方がday 5以外の日に受容期があることが分かってきました。

* * *

 

ERA検査はigenomix社が10年以上かけて開発し、2009年に特許を取得した検査方法です。分子生物学(ゲノム医学)的に解析し、独自のアルゴリズムを用いてその人に適した移植の時期、つまりその人の受容期を判定します。

 

ERA検査は5つのステップに分かれます。

  1. 子宮内膜の調整
  2. 子宮内膜の採取
  3. RNAの抽出
  4. 次世代シークエンサーによる解析
  5. アルゴリズムに従ったデータ解析 

では、それぞれのステップについてみていきましょう。 

 

子宮内膜の調整

基本的には、胚移植するときと全く同じ方法で内膜を整えます。まずはday 5の状態が受容期であると仮定して子宮内膜を調整し、ERA検査を行います。その結果を見て内膜と移植のベストなタイミングを取り計らうのです。 

 

ホルモン補充周期の場合

月経2日目からエストロゲン製剤を開始します。エストロゲン製剤により子宮内膜が十分に分厚くなっている(7mm以上)こと、排卵などで早期にプロゲステロンが分泌されていないことを確認し、プロゲステロン製剤の投与を開始します。

当院では、エストロゲン製剤はジュリナやエストラーナ、プロゲステロン製剤はデュファストンを用いています。プロゲステロン製剤の投与開始日は昼の12時から開始します。プロゲステロン製剤を開始してから、胚盤胞を移植するまでの時間が非常に重要です。

 

自然周期の場合

自然周期の場合、内膜が7mm以上になり卵胞が1618mmに達した時点でエストロゲンとLHの値を測定します。エストロゲンが250pg/ml付近、LHサージがまだ起こっていないことを確認して、午後6時にGnRHa(スプレキュア)スプレーを点鼻し、LHサージを起こします。LHサージ開始後約36時間後に排卵しますので、自然周期の場合はスプレーの2日後がday 0です。胚盤胞移植では、day 5がスプレーのちょうど1週間後になります。

 

子宮内膜の採取

横に穴の空いたストローのような専用の器具を用います。イラストで太く見えますが、実際は極細の柔らかいプラスチックでできています。

この器具で子宮内膜を少し掻くようにしながら陰圧をかけて子宮内膜を吸い込みます。

その後採取した子宮内膜組織を専用のチューブに入れます。検査に必要なRNAは非常に分解されやすいため、チューブの中にはRNA分解酵素の働きを阻害する(働かせない)溶液が入っていてRNAの分解を抑えます。

このときの注意点は組織の量が多くなると組織由来のRNAを分解する酵素が過剰になって検査ができないこと、逆に組織量が少なくてもRNA量が足りずやはり検査できないことです。

 

RNAの抽出

ここから先の行程は、igenomix社のラボで行われます。

以前はスペインまで検体を送らなくてはいけませんでしたが、今は日本支社ができましたので東京に検体を送ります。igenomix社で送付した検体からRNA(メッセンジャーRNA mRNA)を抽出します。そして抽出したmRNAが解析できるかどうかのクオリティ評価を行います。

 

次世代シークエンサーによる解析

抽出したmRNAのクオリティが基準をみたしていれば、検体を次世代シークエンサー(コラム ゲノム医学の発達参照)にかけて解析をします。次世代シークエンサーで、着床に関連する236個の遺伝子の発現パターン(発現プロファイル)を調べます。

 

アルゴリズムに従ったデータ解析

次世代シークエンサーで解析した発現プロファイルをigenomix社のアルゴリズムを用いてデータ解析をします。こうして、採取した内膜組織が受容期にあるかどうかの結果がigenomix社から当院まで郵送されてきます。

 

このようにして世界全国で行われたERA検査45,000例の結果では、day 5子宮内膜の63%が受容期ですが、37%が非受容期でした。さらに37%のうちの87%(全体の32%程度)はday 5が受容期、つまり従来のスケジュールでは移植のタイミングが早いという結果でした。また、37%のうちの13(全体の5%程度)day 5が受容期、つまり従来のスケジュールでは移植のタイミングが遅いという結果でした。

 

実際にずれていたらどうするのかと言いますと、これが少しややこしいのですが、day 5が「受容期の24時間前」であれば、受容期はちょうどday 6になりますので「胚移植を1日遅らせ」ます。「受容期の12時間前」であれば、デュファストンを始める時間や、GnRHaのスプレーをする時間を12時間早めます。

図を参照していただければ、感じがつかめると思います。

このように結果のズレに合わせて移植や薬の時間を変更することで、適切な移植のタイミングを狙うことができるのです。

 

当院ではこれまで、20例ほどERA検査を行っておりますが、12時間のずれでも移植の結果が異なってきます。

 

当院での結果は次回にアップします。

今週はここまでにしましょう。