より安全なPGT-Aを目指して(非侵襲性PGT-A)①
こんにちは、培養室です。
梅雨の時期は、天気予報とにらめっこして傘を持っていくかどうか悩んでいます。荷物はなるたけ少なくしたい……! と意気込みはなかなかのものだろうと思うのですが、勝率は低めです。残念。
さて、PGT-Aの有用性に関する臨床研究が2020年1月から始まって、1年半が経過しました。
全国の様々な施設でPGT-Aを行うべく胚培養やバイオプシーが行われています。染色体数を調べるには胚盤胞の栄養外胚葉から細胞の一部分を取る必要があります。赤ちゃんに対して影響がない部分ではありますが、細胞の一部を取るという行為は胚盤胞に対して侵襲性が高いものです。
「侵襲性が高い」とは、対象に対して物理的なリスク・負担が大きい行為のことを指します。例えば採血をするために「注射針を刺す」場合、「侵襲性を有する」と表現されます。PGT-Aのバイオプシーで言えば、脱出した胚盤胞の一部を取るために要する操作が挙げられます。レーザーを使用するかどうか、その程度、最後に細胞を分断する時の方法……、実施者・施設によって様々なやり方があります。
以前アップロードした動画をご覧いただいた方から、「物理で引きちぎってるんですね」と苦笑いされたことが思い出されます。
当院では訓練を積み重ねた培養士が細心の注意を払って実施していますが、同時に、負担が少なければ少ないほど良い(低侵襲性・非侵襲性)のも事実です。
細胞生検を必要とするPGT-Aに変わるべく、研究されているのがniPGT-A(非侵襲的PGT-A /non-invasive PGT-A)です。
niPGT-Aでは、胚盤胞腔液(胚盤胞内部の液)や、胚培養を行なった培養液から必要なDNAの採取を試みます。これによって胚盤胞への負担を最小限に抑えることが期待されます。反面、細胞そのものを採取できる現在の方法に比べると、採取できるDNA量やDNAの正確性(本当に対象の胚盤胞のDNAかわからない)に不安があるとされています。
メリット | デメリット | |
現行PGT-A (栄養外胚葉の一部を採取) |
採取されたDNAへの信頼性がある※ |
侵襲性が高い 高度な技術を要する |
ni PGT-A (胚盤胞腔液もしくは培養液を採取) |
侵襲性が低い |
採取できるDNA量が少ない 対象以外のDNAが混入する可能性がある |
※採取された細胞が、胚盤胞全体の状態を反映していない可能性はあります