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これからの生殖医療④ 着床前スクリーニング(PGS) part3

こんにちは、中村嘉宏です。
クリニックのホームページが新しくなりました。みなさまにとって見やすいサイトになっていれば幸いです。これからも新しい情報などを随時提供できるように更新していくつもりですので、コラム以外のところも偶には見てやって下さい。

 

さて、前回のコラムではPGSの具体的な手法についてお話ししました。
今回はPGSの問題点についてお話をしましょう。 

PGS(PGT-A) 着床前スクリーニングの問題点

1. PGSで染色体数が正常だとしても100%妊娠するわけではないこと

PGSはあくまで染色体数の異常があるかないかを見ているものなので、染色体すべてが全く正常であるというわけではありません。後で述べますが、染色体数異常以外の染色体異常もあります。

また、妊娠の成立には子宮内膜の状態なども関係します。

 

2.モザイクの問題

染色体数が正常な細胞と異常な細胞がいろいろな割合で交じっている状態を「モザイク」といいます。胚盤胞において、モザイクは珍しいものではありません。

 

下の図はモザイク胚でPGSを行った場合の例です。5個の細胞のうち、7番目の染色体は5個とも1本多く、12番目の染色体は5個中2個の細胞では1本多いが残り3個では正常である例です。12番目の染色体についてモザイクになっています。

 

 

またPGSでは、胎盤になる部分の細胞の染色体を調べているため、PGSの結果が正常でも赤ちゃんになる部分の細胞が異常である可能性もありますが、逆に胎盤になる部分が異常でも赤ちゃんになる部分は正常な場合があります。

これらもモザイクです。

どちらかというと、胎盤に染色体数異常の細胞が含まれていても、赤ちゃんになる細胞側には含まれていないことの方が多いという報告があります。モザイクであっても後の発育の経過で異常な細胞が消滅(アポトーシス)する可能性も指摘されています。つまり、自己修復能がある可能性があります。

モザイクも程度によりますが、すべてが流産したり児に異常がみられるわけではありません。実際モザイク胚から正常な赤ちゃんが生まれています。そのため、モザイク胚も他に移植できる胚がなければ、胚移植の候補になる場合があります。

 

ただ、何番目の染色体にどの程度の割合のモザイク胚であれば胚移植可能かといった問題については明確な基準がなく、それぞれの施設で決めているのが現状です。

 

3.染色体数以外の異常

染色体異常には、本来ペアで46本である染色体数が47本や45本になっている染色体「異常以外にも異常があります。

例えば、染色体が部分的に欠けている、あるいは部分的に多くなっている状態です。

他には、染色体の一部が他の染色体にくっついたり(転座)、一部が逆向きになっている(逆位)ような構造的な異常があります。

部分的な異常を持つ胚も、モザイク胚と同様に胚移植して正常な赤ちゃんが生まれる可能性があり、明確に戻せる、戻せないの基準があるわけではありません。また、先に挙げた部分的な染色体の過多・欠失ならば、PGSで判明する場合もあります。しかし後者の構造異常は、染色体の数、量に異常がないため、そもそもPGSでは検出できません。

 

さらには倍数体といいますが、1本ずつペアである染色体が3倍つまり69本になっている異常もあります。倍数体についても、次世代シークエンサーは染色体量の相対的な比較で染色体数を決めているため、検出できない場合もあります。

 

 

4. 倫理的問題

1〜3では技術的な問題点を挙げてきました。

最後にお話しするのは、倫理的な問題についてです。

着床前スクリーニングは遺伝子異常による流産を防ぎ、流産や中絶の精神的・身体的負担を回避するために行われます。しかし同時に、生命の選別につながる可能性を危惧されているのも事実です。そのため、現状日本では学会のガイドラインにより自由にPGSを行わないように規定しています。同時に、日本産科婦人科学会がPGSの有効性を検証するため、限られた施設でPGSの臨床研究を行っています。

 

この臨床研究は、現在PGSde facto standardの次世代シークエンサーではなくアレイCGH(aCGH)という一世代前の方法で染色体数を検査しています。aCGHは次世代シークエンサーに比べて、いわゆるダイナミックレンジが狭く、染色体異常の検出力は劣ります。

 

以上の問題点は、いずれも避けては通れない課題です。

倫理的な課題は別とするなら、個人的には流産の予防効果や戻す胚を絞り込めるの妊娠率の向上には効果的だと考えています。また、倫理的な問題についてもより良い方向へ進めるように、専門家のみならず広く意見を取り込みながら議論が続けられています。

この記事を書いた人

院長 中村嘉宏

院長 中村嘉宏

不妊治療・体外受精専門のなかむらレディースクリニックの医師や培養士が監修

なかむらレディースクリニックは、不妊でお悩みの方々に安心して不妊治療、体外受精をうけていただくためのクリニックです。朝8時から診察し、平日は木曜日を除いて夜7時まで受付をしています。日曜日、祝日も年末年始以外休まずに診察し、多忙な方でも相談していただきやすい不妊治療を目指しています。

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