プレコンセプションケアに取組む女性への支援 ~大阪府早発卵巣不全患者等妊よう性温存治療助成試行事業~
こんにちは、培養室です。
昼間はまだ暑いですが朝夕は秋めいてきましたね、皆さんどのようにお過ごしですか。
さて、今年7月より「大阪府早発卵巣不全患者等妊よう性温存治療助成試行事業」が始まりました。
当院はこの事業の指定医療機関に承認されており、対象となる検査や治療を受けていただけます。検査・治療を受けるまでの手順をホームページ上でもお知らせしています(▶︎内容についてはこちらから)。
当院は長らくノンメディカルな妊よう性温存※を目的とした未受精卵子凍結を実施してきました。培養室には様々な経験やデータが蓄積されています。
※ノンメディカルな妊よう性温存とは
「社会的卵子凍結」「社会的適応の卵子凍結」などと呼ぶこともあります。病気や、その治療によって卵巣機能の低下が見込まれる治療の前に予め卵子凍結を行う「医学的適応の卵子凍結」に対して、現時点での妊娠ではなく将来に備えて若いうちに卵子凍結を行う場合を指します。
今回のコラムでは「本事業の対象となる方が未受精卵子凍結を実施した時、どのくらい凍結卵子を得ることができそうか?」ということについて、過去の凍結データからお示しします。
集計したデータの対象は以下の通りです。
対象:当院で実施した卵子凍結のうち、ノンメディカルな卵子凍結
期間:2015年1月から2025年8月
女性年齢:18歳~39歳(※本事業の対象年齢)
上記の方をAMHの値が1.0ng/mlより高いグループと、1.0ng/ml以下のグループに分けて比較しました。
上記の方をAMHの値が1.0ng/mlより高いグループと、1.0ng/ml以下のグループに分けて比較しました。
まず、それぞれのグループでのAMHの平均値は、AMHが1.0ng/mlより高いグループで4.4ng/ml、1.0ng/ml以下のグループで0.35ng/mlでした。AMHは1.0ng/mlより高いグループが有意に高い結果となりました。
平均採卵数と平均凍結個数についても同様の結果でした。
一方で、平均年齢については、AMHが1.0ng/ml以下のグループの方が、やや低い結果となりました。これは、平均AMH1.0ng/ml以下のグループの方々が、ご自身の卵巣機能について不安や心配があり受診された結果と考えられます。一方で平均AMH1.0ng/mlより高いグループでは、ご自身の年齢を考えられた上で受診された方が多いと考えられます。
卵子凍結の需要が高まっているとされる一方で、言葉だけが一人歩きをしているような印象を持つことがあります。メリットもあれば、デメリットもあります。誰もがみんな卵子凍結をして然るべき! とは思いませんが、「やって良かった」とお言葉を寄せてくださる方もおられます。「今は子供とか別に考えてないしな〜」という方も、AMH検査をすることで自分の卵巣年齢が分かり、将来設計の一助になるかもしれません。
今回の事業によって、ご自身にとって卵子凍結は必要か考える機会になればいいなと思います。
当院のホームページ上でも卵子凍結についてのページを設けておりますので、ぜひご覧ください(▶︎こちらから)。
卵子凍結についてよく分からないこと、不安なこと、聞いてみたいことなどありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
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